ヌレエフの「くるみ割り人形」 Lo Schiaccianoci di Rudolf Nureyev

ヌレエフって天才… いえ、ダンサーとしては勿論そうなのでしょうが今回amicaが開眼したのは振付家としてのヌレエフです。ルドルフ・ヌレエフが「くるみ割り人形」を初めて振付けたのは1968年2月、ストックホルム王立歌劇場においてでした。それからこの「くるみ」はロイヤル・バレエ、スカラ座、パリ・オペラ座などでも上演されました。基本的には同じ振付でも劇場が変わるたびに少しずつ変化はあったそうです。スカラ座でのヌレエフ振付版の初演は1969年9月18日でした。

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スカラ座で踊るヌレエフとカルラ・フラッチ

「くるみ割り人形」オリジナル版
バレエに詳しい方はこの名作についてはもうよくご存知と思いますが、amicaはロビーのおかげで今回「くるみ割り人形」について少しお勉強することが出来ました。ちょっと長くなってしまいますがそれをここにまとめてみます。

1892年12月6日にサンクト・ペテルスブルグで初演された「くるみ割り人形」はプティパが考案したものの、彼が途中で病気になり実際の振付はレフ・イヴァーノフが行いました。チャイコフスキーの3大バレエの中でも「くるみ割り人形」は物語の構成を大きく変えた改訂版が数多く存在します。森田稔氏の「永遠の『白鳥の湖』」(新書館)という本によるとその原因は、オリジナル台本の弱さにあるそうです。台本の原作はE・T・A・ホフマン、それをアレクサンドル・デュマ(父)がフランス語に訳したものが元になっています。

バレエの構成としては、第一幕がジルベルハウス家の広間でのクリスマス。クララがドロッセルマイヤー氏からくるみ割り人形を贈られ、夜中にくるみ割り人形とねずみの王様の戦いをクララが助け、勝利したくるみ割り人形が王子に変身するまで。第二幕は王子に案内されたクララがお菓子の国を訪ね、ドラジェの精(金平糖の精)とコクリューシ王子に迎えられ彼らを初めとするお菓子の国の人々の踊りを楽しむ、という構成になっています。

オリジナル版の問題点は物語の観点からは第一幕は騒がしい動きが多く、第二幕は何も起こらない。踊りの観点からは第一幕は主役の踊りが無く、第二幕は踊りに物語が無い、ということになるそうです。この問題を解決するために後の振付家が色々な版を作りました。

オリジナル版の登場人物としては、クララとくるみ割り人形、そしてドラジェの精とコクリューシ王子という、物語の主役と踊りの主役が別々にいる点が問題となります。初めにこの二つのカップルを一つにした(もしくはドラジェの精とコクリューシ王子をカットした)のは1919年にモスクワ初演したゴールスキイGorskijだそうです。その後かなりの期間、主人公カップルが一組のみの演出が主流となりました。

これらの改訂による影響として重要なことは「くるみ割り人形」の振付は「白鳥の湖」や「眠りの森の美女」と比べるとプティパ&イヴァーノフの振付が(台本に欠陥があったことによって)後世に伝わらなかったということです。DVDにもなっているピーター・ライトの「くるみ割り人形」は1984年にチャイコフスキー研究家のワイリーという人が集めた資料を基に可能な限りイヴァーノフの振付を再現しており、その意味で貴重なものだそうです。つまりこれが出るまではオリジナルの振付は忘れられていたのです。ヌレエフはプティパを非常に尊敬していたので、「白鳥の湖」や「眠りの森の美女」では自分の振付作品の中にプティパ(とイヴァーノフ)の重要な振付を残しています。しかし、「くるみ割り人形」に関してはヌレエフが振付した時期にはオリジナル版を見ることが出来なかったために、かえって彼はより自分らしさを反映したバレエを作ることが出来たのではないかと思います。ヌレエフの音楽に対する鋭い感覚がチャイコフスキーの音楽と直接向き合うことによって大変優れた振付を生み出しています。

ここで感謝しなくてはいけないのがいつも貴重な資料を貸してくださる友人達の存在です。今回もパリ・オペラ座がスタジオで撮影したローラン・イレール、エリザベート・モーラン主演「くるみ割り人形」の映像を借りられたおかげで、実際の公演を見る前に予習することが出来、ヌレエフの振付への理解が深まりました。深謝です。

ヌレエフ版「くるみ割り人形」
ヌレエフ版にはドラジェの精とコクリューシ王子は出てきません。そしてドロッセルマイヤーが王子を演じます。くるみ割り人形は別のダンサーが踊ります。スカラ座のプログラムによるとヌレエフ版のライトモチーフ(示導動機)の役割を果たしているのが王子とクララによって踊られる3つのパ・ド・ドゥです。ヌレエフはこのバレエを、クララの少女からエロスを知る女性への成長物語と捉えており、この3つのPDDによって彼女の成長が語られるのだそうです。バレエは2幕構成になっており、第一幕の終わりに一つ目のPDDがあり、これは少女としてのクララで、踊りは王子に対してフォーマルであり、まだ色のついていない純白の雪の中で踊られます。第二幕の初めにある二つ目のPDDはより滑らかで流れるような腕の動きがある活発な踊り。そして第二幕の最後のPDDはクララというよりもはや大人に成長した一人の女性を抽象的に表現する踊りで、女性としての自覚を持ち、パートナーの男性を信頼していることが見て取れる。そのことは手をつないだ二人のアラベスクから始まりさまざまなアラベスクによって表現されますなるほどー。クララに大人のエロスを教えてあげる王子様がロビーというわけですね~。きゃ~(赤面)。

ロベルト・ボッレの「くるみ割り人形」
ちなみにヌレエフはスカラ座の初演だった1969年からずっとドロッセルマイヤー=王子様を踊り、1987年までは自分で主役を踊っていました。その次の1990年の上演には監修者としてミラノに来たのですが、その時が15歳のロベルトにとってヌレエフとの運命の出会いになったわけです(以前のインタビュー記事などをご参照ください)。その後スカラ座で「くるみ割り人形」はゾルタン・ソイモジー、ローラン・イレール、ホセ・カレーニョ、マッシモ・ムッルなどが踊っています。ロベルトが初めて主役を踊ったのは2002年の12月のこと。その後は、2004年にも再演されています。相手役は2002年がリサ=マレー・クルムさん。2004年はエレオノーラ・アッバニャートさんです。

ここからは今回見たスカラ座のクリスマス公演に関する記事です。初日である12月16日(と21日)を鑑賞しました。

Lo Schiaccianociくるみ割り人形
Musica di Pëtr Il’ič Čajkovskij音楽 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
Coreografia e regia di Rudolf Nureyev振付と演出 ルドルフ・ヌレエフ 
Ripresa coreografica di Aleth Francillon振付再現 アレス・フランシロン
Allestimento del Teatro alla Scala美術装置 スカラ座所有
Il dottor Stahlbaum…..GIANNI GHISLENI シュタールバウム氏:ジャンニ・ギスレーニ
La Signora Stahlbaum…..LAURA CACCIALANZA シュタールバウム夫人:ラウラ・カッチャランツァ
Il Signor Drosselmeyer / Il principe…..ROBERTO BOLLE ドロッセルマイヤー氏/王子:ロベルト・ボッレ
Clara…..LISA-MAREE CULLUM クララ:リサ=マレー・クルム
Fritz…..ANTONINO SUTERA フリッツ:アントニーノ・ステーラ
Luisa…..EMANUELA MONTANARI ルイザ:エマヌエラ・モンタナーリ
La nonna…..PIERA PEDRETTI 祖母:ピエラ・ペドレッティ
Il nonno…..VITTORIO D’AMATO 祖父:ヴィットーリオ・ダマート
Lo schiaccianoci…..MASSIMO DALLA MORA くるみ割り人形:マッシモ・ダッラ・モーラ
Il re Topo…..NEDO ZINGONI ねずみの王様:ネド・ジンゴーニ
Fiocchi di neve…..SOPHIE SARROTE, DEBORAH GISMONDI 雪の精:ソフィー・サッローテ、デボラ・ジスモンディ
Danza spagnola…..EMANUELA MONTANARI, ANTONINO SUTERA スペインの踊り:エマヌエラ・モンタナーリ、アントニーノ・ステーラ
Danza araba…..PIERA PEDRETTI, VITTORIO D’AMATO アラブの踊り:ピエラ・ペドレッティ、ヴィットーリオ・ダマート
Coppia solista araba…..MARTA ROMAGNA, RICCARDO MASSIMI アラブの踊りソリスト:マルタ・ロマーニャ、リッカルド・マッシミ
Danza cinese…..MAXIME THOMAS, MAURIZIO LICITRA, SALVO PERDICHIZZI 中国の踊り:マキシム・トマス、マウリツィオ・リチートラ、サルヴォ・ペルディキッツィ
Danza russa…..LAURA CACCIALANZA, GIANNI GHISLENI ロシアの踊り:ラウラ・カッチャランツァ、ジャンニ・ギスレーニ
Pastorale…..DEBORAH GISMONDI, SOPHIE SARROTE, ALESSANDRO GRILLO 羊飼いトリオ:デボラ・ジスモンディ、ソフィー・サッローテ、アレッサンドロ・グリッロ
e IL CORPO DI BALLO DEL TEATRO ALLA SCALA スカラ座バレエ団
con la partecipazione di Allievi della Scuola di Ballo dell’Accademia del Teatro alla Scala スカラ座アカデミーバレエ学校の生徒たちが出演
Coro di Voci Bianche del Teatro alla Scala e del Conservatorio “G.Verdi” di Milano diretto da ALFONSO CAIANI スカラ座少年少女合唱団およびミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ音楽院合唱団 合唱指揮:アルフォンソ・カイアーニ

Direttore…..KEVIN RHODES 指揮:ケヴィン・ロードス
Scene e costui di NICHOLAS GEORGIADIS 装置、衣裳:ニコラス・ジョージアディス

序曲
指揮の井上道義さん、じゃなかったケヴィン・ロードスさんが登場。外見だけでなく動き方もマエストロ・井上にそっくり。2年前に聞いた時のニール・カバレッティ氏の指揮はあまり音楽が美しくってキャスト表を見直しちゃったくらいでしたが、今回は何だか楽器が揃っていませんね~。ロベルト・アラーニャ騒動の「アイーダ」があったばっかりでオーケストラの皆さんがお疲れだったのかしら?せっかくの序曲が残念でした。

第一幕
幕が開くとシュタールバウム家の玄関の外。小雪が降っています。いたずらっ子たちが騒いでいるところへシュタールバウム家に招かれた人々が入っていきます。そしてドロッセルマイヤー氏が登場!おおっ。やたら背が高く、白い(ちょっとロココ風な)かつらを被った黒い眼帯をしたロビーは何だかマリー・アントワネットお抱えの時計職人に変装した親衛隊長みたいな趣ドロッセルマイヤーには美しすぎっ!アントワネットになってこんな隊長に守られたい~。でも、変装は完全にばれていますよ、ロビー~。足が悪くてひきずっているという設定で、ロビーの動きはかなりゆっくりです。くるみ割り人形を狙う少年たちを投げ飛ばすところはなんだか柔道の技みたい。「先輩はやっぱり強いっスね~。俺たちはまだまだかなわないっス。」

そして場面は家の中に。20世紀初頭の裕福なお宅でリバティー様式のインテリアが美しい。家にはもう招待客と子供たちが一杯。そこにドロッセルマイヤー氏が登場します。胸の辺りに手を当てているのでちょっと具合が悪くなった人みたい。コートを脱いでますます美しいロビー。表情もローラン・イレールの映像などはかなり上手に変な人になりおおせていますし、ヌレエフがドロッセルマイヤーに扮した写真は完全に『怪しいおじさん』。ところがロベルトは美貌が全然隠れていない!表情も美男のままなのです。あ、でも子供たちと踊るところはほっぺたを膨らませたり、お猿さんみたいなウッキッキという動きをしたりしてとっても可愛かったな~。

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子供たちを翻弄するドロッセルマイヤー氏

子供たちはみんな天使のよう。それに子供の踊りの部分は「くるみ割り」の一番覚えやすいメロディーで盛り上がります。ドロッセルマイヤー氏は極彩色のマントに帽子を被り再登場、子供たちに人形劇を見せます。そして3体の人形を抱えてきて躍らせます。この人形たちは実はシュタールバウム家の三人の子供フランツ、クララ、ルイザ。フランツは兵隊、クララはコロンビーヌ、ルイザはトルコ人(?)に扮して踊ります。

クララ役はリサ=マレー・クルム。ミュンヘン・バレエで活躍しているプリマだそうで、すらっとした上品な美人さんです。2002年にもロベルトと踊っています。さて、ここでロベルト・ファンにはたまらない場面が。クララにくるみ割り人形をプレゼントしたロベルト@ドロッセルマイヤー氏は彼女が喜び踊るのを見て、舞台下手のピアノのところへ行って伴奏してあげるのです(弾きまねですが…)そういえばロベルトは子供の頃ピアノを習っていたそうですが、しっとり音楽的に弾いていました。ピアノを弾く男性に弱いamicaはもう興奮状態。結構端っこにあるピアノが見える席で良かった~!

フランツがくるみ割り人形を壊しますが、優しいドロッセルマイヤー氏はすぐに修理してクララを慰めます。クララは人形を抱きしめソファーに座り込みます。そこで大人たちが広間に帰ってきてワルツを踊り始めます。ここで最高なのが祖父役を踊ったヴィットーリオ・ダマート。そう、「ジゼル」のDVDでおなじみの我らがヒラリオンです。彼は本当に演技が上手い。祖父母がうかれて踊りだし、腰がイタタ、といいながら元気に踊っちゃう、という場面なのですがダマートさんの踊りは真に迫っていて本当に愉快でした。ブラヴォー!

ひとしきり盛り上がった後、皆は別室へ。クララは上手にある安楽いすの上で眠り込みます。すると舞台奥を仕切るガラスの大扉の向こうが光り、ネズミちゃん達が這い出してきます。3匹、4匹、5匹、6匹…真夜中の鐘が鳴り出すとさらに12匹のネズミが飛び出してきて舞台中央に皆が集合!大勢になったネズミ達はガラス戸に体当たりしてクリスマス・ツリーと贈り物のテーブルがある次の間へ乱入。クララの目が覚めるとクリスマス・ツリーがぐんぐんと天井に向けて伸び、彼女はネズミたちと同じ大きさに。あわててくるみ割り人形を守るクララ。他のプレゼントや贈り物を投げてネズミの興味をそらしますが彼らはすぐ戻ってきてしまいます。クララはなぜかネズミたちにどんどん服を脱がされてスリップ・ドレスのような格好に。かなり危ないネズミたちなのです(汗)。クララがテーブルの上に逃げるとネズミの王様が登場~!絶体絶命になったところへ、くるみ割り人形が彼女を救うために動き出します。

先ほど書いたようにヌレエフ版のくるみ割り人形は王子とは別の人が演じます。スカラ座ではコールド・バレエの中でも一番の美男マッシモ・ダッラ・モーラ君が抜擢され踊っていました。ネズミと人形たちの激しい銃撃戦が繰り広げられます。そしてくるみ割り人形は最後にネズミの王様を刺し殺します。ネズミたち、兵士たちは一瞬のうちに消えあたりは闇に。

そして剣を頭上にかざしたくるみ割り人形が立っていたところが明るくなるとロベルト@王子様の登場ですっ!弦が甘いメロディーを奏で、クララはすぐに夢見心地に。剣を下に置いた王子様の腕の動きに従い踊ります。これが一つ目のPDDです。不思議な予感に満ちた踊りの背景には冬の森が現れます。手をつないでのアラベスク、回転、逆回転。王子にサポートされてクララが踊っていると雪が降り始めます。二人が同じ踊りを交互に踊ったり手をつないで難しいパを踊ったり、ヌレエフならではの凝った足さばきを堪能。

そしてここでヌレエフ版ならではの美味しいシーンが。そう、ここに王子様のソロがあるのです。舞台下手にクララを退場させ戻ってきて上手に生きざま空中へ。細かくアントルシャ、アラベスク、などを繰り返し、最後にマネージュで王子が退場すると雪の精たちが登場します。子供の合唱に乗せて女性のみの群舞が舞台を大きく使って華麗に踊ります。衣裳も白と銀でとってもきれい。楽器はグロッケンシュピールとハープ(上手!)が活躍して素晴らしい効果を出して第一幕は終わりとなります。

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リサ=マレー・クルムさんとロベルト。2002年の舞台より。

第二幕
第二幕が開くと再び王子様とクララが舞台中央に立っています。二つ目のPDD。あの~。プログラムによるとこれはクララの成長物語だそうですが、さっき一つ目のPDD踊ったばっかりですよね。ということは第一幕と第二幕の間に二人の間に何かあってクララが成長したんでしょうか。きゃ~。クララったらいったいロビーと何したんですかっ?(注:これは勿論amicaの妄想です。す、すみません…

それはともかく、このPDDは一つ目に比べると流れるような腕の動きが特徴的なかなり活力に満ちた踊りです。クルムさんは技術的には手堅く踊っているのですが、残念ながらこのあたりになってくると主役の輝きがちょっと足りない、と思ってしまう。顔もほんの少しうつむきがちでおとなしい印象を与えてしまうんです。ロベルトは次々美しい型を決めていきます。そしてついに「くるみ割り人形」の特徴でもある楽器チェレスタの登場。もともとはお菓子の国でドラジェの精(金平糖の精)が登場するとこのチェレスタ(天国的なという意味)の甘い音がするわけですが、ヌレエフ版では二人で手をつないでランラン走ってしまったりして、ラブラブ・カップルの甘~い天国を表しているのでした。

踊り終わるとクララは再び広間の安楽椅子に座っています。王子は消え、くるみ割り人形、ネズミ、ドロッセルマイヤー、ネズミの王様などの幻影がつぎつぎに現れます。そしてクララの家族がコウモリの格好をして彼女を脅かしに来ます。フロイト的な不安な世界を体験した後、再び王子が登場し、クララにコウモリたちが実は彼女の家族であることを示します。王子様に「ほら、怖くないよ」と言われたクララ、お次は世界のさまざまな踊りが繰り広げられるいわゆるディヴェルティスマンの場面。

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ディヴェルティスマン鑑賞中のお二人

スペインの踊り
スカラ座の軽量級アイドル、ステーラ君がパートナーのエマヌエラさんと元気に飛び跳ねていました。ただ、二日目は金管楽器がバフッと大きなミスをしてクララの安楽椅子の肘掛に腰をおろしていたロビーもちょっとビクッとしたように見えたくらい。スカラ座オケ、しっかりしてくれ~。

アラブの踊り
皆で大皿を囲んでご飯を食べている。我らのヒラリオンが再登場。ケチな主人役で皆にあまりご飯をあげないので、若いカップルがついに頭に来てこの主人を色仕掛けでだまして財布を抜き取る、という踊り。マルタ・ロマーニャさんと濃い目のハンサム、マッシミ君が身体能力の高さを生かした踊りで喝采を浴びていた。

中国の踊り
やたらめったら高速回転をする三人組。ぎらぎらの青竹色の衣裳が凄い。

ロシアの踊り
酔っ払ったロシア人の夫婦の踊り…だと思う。

羊飼いたちの踊り もろロココ調。スカラ座のプリンシパルでロベルトがいないときに主役を踊るグリッロ君と、来日公演で「ドンキ」を踊る苦行僧ミック・ゼーニ君が16日と21日にそれぞれ踊っていた。初日はグリッロ君がなんだか元気ないし、ゼーニ君はあまりパートナーと合っていなかったのでもしかして急な代役?

ディヴェルティスマンが終わると「くるみ割り人形」のハイライトともいえる「花のワルツ」の音楽へ。舞台は宮殿風の室内へ転換し、シャンデリアが降りてきます。ヌレエフは男性のみの群舞のパートも創り、かなり力を入れています。この場面は視覚的には輪がモチーフで、円を描いたカップルたちはまさに花が次々開くような華麗なる踊りを繰り広げます。

そしてついに主役二人の最後のPDD。アラベスクの連続が美しい。リフトもフィッシュ・ダイヴもサポートも、そしてロビーのトゥール・ザン・レールも典雅だわ~。は~。リサさんのソロはあの有名なチェレスタの曲に載って踊られますが、ロベルトのソロと比べるとかなり辛いものが。ここはやはりエトワールの輝きがないと物語の主人公に成りきれない。当初の予定通りパリ・オペラ座のオーレリー・デュポンが出演していたら全然違うものになっていたかも知れません。最後に二人で踊り、そして有名なポーズ、そうリサさんがロベルトの体の横に全身で乗ってしまうあのポーズです!欠かせない存在としての男性を表しているんですって。なるほど~。さきほどのPDDもそうですが、途中いくつかある決めポーズが音楽に本当に良くあっています。イヴァーノフを再現したというピーター・ライト版より私はこちらのほうが音楽に合っているんじゃないかとすら思います。ヌレエフさん、このバレエの振付は凄いです!

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三つ目のPDD

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これが話題の全身乗せだ!

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こちらはヌレエフとMerle Parkさん。写真が逆焼きなのでしょうか…?

最後にまた群舞のワルツが出てきて主役の二人と一緒に踊ります。そして、すべてが終わった時、場面は再びシュタールバウム家の居間へ。来客たちが次々とお別れの挨拶をして帰っていきます。ドロッセルマイヤーが登場。凄い早変わり。安楽椅子で眠っているクララを抱き起こし一家に挨拶をしてドロッセルマイヤーは独り帰っていきます。場面はお屋敷の外、バレエの幕開きの場面へ戻ります。外に出たドロッセルマイヤーはすばやく身を隠し、彼を追って出てきたクララを影から見守ります。くるみ割り人形を抱いたクララに雪が静かに降りかかりバレエはこうして幕を閉じるのでした…

ということで長々と書いてまいりましたが、若きヌレエフ(30歳になるかならないか!)が全曲を振付けたこのバレエは、彼の過剰な、そして華麗なテクニックがこれでもかと織り込まれています。チャイコフスキーの奇跡のような音楽に完全に合致した、バレエの神髄ともいえるヌレエフの振付に感動しました。舞台装置も豪華ですし、スカラ座バレエ団のレベルが高かったことも作品の理解に大きく寄与していたとおもいます。そしてやはりロベルトの踊りは凄い!隅々まできっちり踊ることはいつもの彼なのですが、クリスマス・シーズンの皆が期待している初日公演だからこそ、ますますオーラを発して華々しい存在を見せつける彼にはまさにエトワールの輝きがありました。このバレエを作った時のヌレエフとほぼ同じ年のロベルトが踊る「くるみ割り人形」を見られたことは私にとって素晴らしい体験でした。

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